石元泰博・コレクション展「雲、紙、雪のあしあと」

《雲》1991年頃 Clouds ©Kochi Prefecture, Ishimoto Yasuhiro Photo Center

バウハウスの流れを汲んだ造形感覚に裏打ちされ、時に即物的とも称される石元の眼差しは、晩年、刻々とうつろいゆく形なきものに向かいました。

水や氷の細かな粒子の集合体である雲は、時々の季節や気候によって自在に変化し、一時として同じ姿に留まりません。同じく水の変態である雪は、静かに降り積もってあわく柔らかな表情を見せるのも束の間、路上を行く人々に踏まれてシャーベット状に溶け、瞬く間に水となって消えてゆきます。

一方、紙を写した連作は、ラースロー・モホイ=ナジらの著書に触発されて取り組んだ、若き日の習作を彷彿とさせ、晩節にあって自らの創作を振り返った、原点回帰的な試みととらえられます。切り抜き丸まった紙片には定まった形があるものの、その存在を印画紙上に表すモノクロの諧調は、光の具合によって劇的に変化します。このことに、常に生成し消滅するつかみがたい現在をみつめた、雲や雪のあしあとの連作との共通点を見出すこともできるでしょう。

本展では、1990年代から最晩年に掛けて取り組んだ、うつろいゆく雲と雪のあしあと、そして紙を写したシリーズを紹介します。






[出品情報]「丹下健三と隈研吾 東京大会の建築家たち」展(パリ日本文化会館)

フランスのパリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)で開催される展覧会「丹下健三と隈研吾 東京大会の建築家た

もっと読む →

石元泰博・コレクション展「きらめき」

今年度第1回目の石元泰博・コレクション展では、「きらめき」をテーマに、ガラスや陶器、漆器などを写した作品を紹介します。それぞれ被写体や撮影年が異なる本作品群は、

もっと読む →

高知県立美術館 コレクション・テーマ展
「写真の冒険 シカゴの写真家たちを中心に 石元泰博コレクションより

当館が誇る「石元泰博コレクション」には、高知ゆかりの写真家・石元泰博の自作のみならず、同時代に活躍した写真家たちの手によるプリントも含まれています。本展では、石

もっと読む →