石元泰博・コレクション展「伊勢神宮」

石元泰博《伊勢神宮 内宮 東宝殿 東南隅床部分の軸組》1993年 ©高知県,石元泰博フォトセンター

桂離宮を捉えた一連のシリーズで、日本の伝統建築を西洋的モダニズムの視点によって写したと評される石元泰博。石元にとって日本古来の建築様式を今に伝える伊勢神宮は、1953年の来日以来、ずっと撮りたいと思っていた存在でした。その願いが叶ったのは第61回式年遷宮※に際してで、89年より周辺地域から撮り進め、93年にはついに内宮と外宮の撮影を許可されました。石元は、遷宮直後の諸殿舎の美しさと存在感に理屈抜きの感動を覚え、その姿を大判のカメラとフィルムによって克明に刻みました。限られた期間での撮影は常に時間と天候との格闘のようで、刻々と変化する自然光に翻弄されながら撮影を進めた石元は、鬼の形相だったと伝えられています。

その成果は、建築家・磯崎新と建築史家・稲垣榮三らの論考とともに写真集『伊勢神宮』としてまとめられ、95年に岩波書店より刊行されました。本展では前後期を通じ、写真集掲載の作品から厳選したオリジナルプリント約60枚と、その関連資料を紹介します。

石元は、桂離宮の美しさが時を重ねた佇まいにある一方、20年ごとに装いを新たにする伊勢神宮には、独特の美しさがあると語っています。桂離宮が湛える経年の風格や、建築が織りなす直線美を男性的とするならば、伊勢神宮は、遷宮の直後が最も美しくつややかで、丸柱のふくよかさや草屋根の曲線美が女性的であると形容しています。また、遷宮という独自のしきたりによって新旧が循環する伊勢神宮に、まるで螺旋を描くような時の経過を見出していました。この絶えず変化してゆくものという、石元の新たな時間への視点が、川の水面や空に浮かぶ雲等を被写体にした後年のシリーズ<うつろい>へとつながっていくのです。

※決められた年(式年)に社殿を新しく建て直して移し(遷宮)、神々に捧げる調度品もすべて新たにする行事。