石元泰博・コレクション展「雪のシカゴ」
令和6年度第3回目の石元泰博・コレクション展は、写真家にとって第2の故郷とも言えるアメリカ・シカゴにて撮影された作品を紹介します。
1939年、家業を継ぐべく農業を学びに渡米した石元は、やがて写真と出合い、1948年、シカゴのインスティテュート・オブ・デザイン(ID)に入学しました。石元は在籍中の4年間、「1日29時間写真に向き合う男」と言われるほど写真漬けの毎日を過ごし、授業や路上撮影等の課題を通じて写真の理論や技術を体得しました。その後日本で写真家として活躍するなかで、再度渡米の機会を得た石元が滞在先に選んだのも、自身のキャリアをスタートさせたゆかりの地、シカゴでした。この2度目の滞在で撮影した写真をまとめた写真集『シカゴ、シカゴ』は、石元の代表作のひとつとして、高い評価を得ています。
シカゴで撮影された膨大な作品群には、折々の季節を感じられるものが数多く存在します。本展では冬に焦点を当て、前期の展示では降り積もった雪と、車や扉を造形的に切り取った作品、後期の展示では、雪に包まれた街並みや、シカゴの人々の日常を写した作品を、関連資料とあわせてご覧いただきます。
氷点下にまで及ぶこともある厳しい寒さの季節に撮影されたこれらの作品群には、写真家自らが焼き付けたモノクロームの美しい諧調によって、画面にちらつく雪の降る様子をやわらかに伝え、車と扉に降り積もった雪が絶妙なコントラストで表現されています。また、建物や公園など街全体が雪に覆われた様や、厚いコートに身を包み道を行く人々、降り積もった雪のなかで楽しげに過ごすこどもたちの姿など、石元のまなざしを通し、シカゴの冬を追体験いただけることでしょう。