石元泰博・コレクション展「湖国の十一面観音」

近世まで近江国と呼ばれた滋賀県は、都(奈良や京都)に近いことから、陸上交通だけでなく琵琶湖を利用した水上交通も発達するなど、人々の往来や交易が盛んな地域でした。また、琵琶湖の西側(湖西)には、最澄が開いた天台宗延暦寺の所在する比良(ひら)・比叡(ひえい)山地があるなど、宗教的にも重要な土地でした。
1981年夏、第36回国民体育大会(国体)の夏・秋季大会が滋賀県で開催されることに合わせ、同県内の複数の寺院に伝わる十一面観音像を撮影し、展覧会を開けないかという話が石元に舞い込みました。国体開催までの日数は限られていたため、撮影期間は短くならざるを得ませんでしたが、その多くが秘仏である観音像を撮影できる機会はそうないと、快諾しました。準備万端で撮影に臨んだ石元でしたが、県全域に点在する寺院を巡るには、都度琵琶湖を迂回する必要があり、移動には苦労が多かったようです。
1970年代に石元は、仏教美術の撮影を断続的に行いました。1973年には東寺の伝真言院両界曼荼羅の撮影を通して曼荼羅に人間の生命観の根幹を成す「エロス」を見出し、1977年頃の大分県国東半島に伝わる石仏群の撮影では、地域に脈々と引き継がれる文化や風習に日本人の本質を見出そうとしました。十一面観音の撮影においては、御堂で代々大切に祀られ、地元の人々に寄り添うように佇む観音像の姿を目の当たりにし、自らが忘れかけていた仏への深い信仰心に気づかされたと言います。
本展では、11の寺院に伝わる十一面観音像を写した作品を、オリジナルのカラープリントで紹介します。

 

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