石元泰博・コレクション展「選挙」
今から60年前の1960年、アメリカは今年と同じく大統領選挙が行われた「エレクション・イヤー」でした。石元はちょうどこの時期シカゴに滞在しており、当時の街の様子を数多く撮影しています。
苦手意識のあった「人を撮る」ことを自らに課し、靴の底が擦り切れるほど日々シカゴの街を歩いて撮影に没頭していた石元にとって、支持する政治家を応援するため、あるいは自由や権利を勝ち取るため、人々が通りに繰り出し声を上げる姿は、格好の被写体だったことでしょう。人々の力強い表情や姿態と、プラカードや看板に溢れるサインやイメージが渾然一体となって、群衆のエネルギッシュなうねりとして生き生きと写しとられています。
代表作の写真集『シカゴ、シカゴ』(美術出版社、1969年)を構成する章のひとつは、こうした政治活動を行うシカゴ市民たちの姿や、街に掲げられた星条旗をおさめた写真によるもので、当時こうした被写体に石元が強い関心を寄せていたことが分かります。生まれによりアメリカ国籍を有していた石元にとって、母国の行く先を大きく左右する大統領選挙の記録は、自身のナショナル・アイデンティティを見つめる作業でもあったかもしれません。
本展では、石元が残したフィルム番号を手掛かりに、1960年シカゴで行われた選挙活動の様子を、ほぼ時系列に沿って展覧します。