石元泰博・コレクション展「きらめき」

《薩摩切子》1973年 ©高知県,石元泰博フォトセンター ※被写体は尚古集成館所蔵 
Satsuma Kiriko, 1973 ©Kochi Prefecture, IshimotoYasuhiro Photo Center *Satsuma Koriko item from the collection of Shoko Shuseikan Museum.

今年度第1回目の石元泰博・コレクション展では、「きらめき」をテーマに、ガラスや陶器、漆器などを写した作品を紹介します。それぞれ被写体や撮影年が異なる本作品群は、その多くがクライアントからの依頼によって撮影されたものです。

匠のきめ細やかな手仕事が光る《薩摩切子》や《ガラス器》は、1974年、雑誌『世界』(岩波書店)のグラビアページに登場しました。誌面ではカラーとモノクロ両方の写真が掲載されていましたが、今回は掲載作品を中心にしたモノクロプリントを紹介します。色彩が除かれた画面には、実物のカラーグラデーションが複雑なモノクロームの色調で表現され、模様の精密さをストレートに伝えるとともに、存在感を示しています。

《医療用ガラス》や《工業用ガラス》は、日本電気硝子株式会社が制作した広報誌『P&P』のために撮り下ろされたものです。企業広報用の写真も多く手掛けた石元は、1970年代よりこの撮影に取り組みました。ガラス器とは異なり普段の生活になじみの薄いガラス製品を、迫力ある構図で収めた本作は、その独特な透明感と曲線、精緻な構造を伝えています。ドラマティックな演出が施された画面からは、ものづくりに向き合い、高度な製品を世に生み出す企業への尊敬の念も感じられます。

戦後日本のデザイン界をけん引し、石元とも交流の深かったデザイナー柳宗理のプロダクトを捉えた写真もまた、竹中工務店の広報誌『approach』の特集のため撮影されました。この他、日本の工芸品を被写体にした〈かたち〉シリーズより、滑らかな触感を伝える漆器や花瓶などを紹介します。

これらの作品群は、石元が依頼者からの要望に応えるべく、被写体に真摯に向き合った結晶とも言えます。そして石元自身がこだわって焼き付けたオリジナルプリントには、素材そのものが持つ質感や光沢、職人の精緻な手わざ等、多様な「きらめき」が表現されています。


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