石元泰博・コレクション展「ハロウィン」
20世紀以降のアメリカにおいて、国民的な民間行事として親しまれてきたハロウィン。10月31日の夕暮れにこどもたちが仮装して家々を巡ると、いたずらをしない代わりにお菓子をもらうことができます。石元が暮らした1940~60年代のシカゴにおいても、様々な民族のこどもたちが思い思いの姿に扮して街に繰り出しました。
石元は、インスティテュート・オブ・デザイン在学時と、後の再渡米時にハロウィンの怪しげな仮装をして暗がりに佇むこどもたちの様子を数多く写真におさめています。魔女やおばけなどに変身しようと、手作りの衣装や仮面を身に着け、顔にペイントを施すなどしたこどもたちの姿は、路上に被写体を探す写真家にとっても魅力的な存在だったのです。
1959~61年の撮影では、当時最新の一眼レフカメラや高性能なレンズを用いることで、薄暗い中でもこどもたちの様子を至近距離で克明に捉えることに成功しています。特に、仮装した「顔」にクローズアップした一連の作品は、こどもたちの生き生きとした表情が印象的です。それは、石元の新たな機材によって得られた未知の視覚への驚きと、ハロウィンの祝祭的な高揚感とが一体となって表れたものと言えるでしょう。
本展では、発表される機会の少なかったカットも含めて、シカゴのハロウィンを写したシリーズを一堂に紹介します。