石元泰博・コレクション展「東京―山手線界隈」
1953年にシカゴから帰国以来、東京を拠点に活動してきた石元は、常に自らが暮らす街から社会の姿を撮影してきました。1980年代、バブル景気に向かい激しく変貌するメガシティ“東京”を記録するため、石元は山手線の29駅周辺に的を絞り込み、高解像度で再現性の高い8×10インチという大判フィルムを選びました。
建設が進む新東京都庁、真新しい巨大ビルと傍の小さな木造建築との対比、上野公園の西郷隆盛像の前ではやりのヘアースタイルでポーズする女子高生など、80年代の世相や空気感も写し撮りました。これらはシリーズ≪山の手線・29≫として『アサヒカメラ 増刊』「特集“都市を視る”」(1983年)誌上で発表され、その後も、石元は引き続き撮影を続けました。
この約10年に及ぶ一連のシリーズは、戦後復興期から長らく東京を見つめてきた石元の、映像による骨太な都市論となりました。