石元泰博・コレクション展「両界曼荼羅」
石元は、雑誌『太陽』の仕事をきっかけに京都・東寺(教王護国寺)の国宝「伝真言院両界曼荼羅(西院曼荼羅)」と出会いました。ファインダーに浮かび上がった仏や菩薩たちの鮮烈な美しさに、石元のみならず寺の関係者も魅了され、特別に撮影が叶ったといいます。
1973年、酷暑のなか行われた撮影で、石元はこの現存する最古の彩色両界曼荼羅にひしめく1800を超える諸尊を、のめりこむように撮り尽くしました。被写体の本質に徹底して迫る写真家の眼によって切り取られた膨大なイメージには、描かれた当時のように鮮やかな色彩やのびやかな筆致とともに、絵具の剥落や絹本のほころびといったディテールの物質性が克明に刻まれ、仏や菩薩たちが湛える、まるで生身の人間のような生命感までもが掴みとられています。これらの写真は、気鋭のデザイナーや最新の印刷技術とのコラボレーションによって、展覧会や豪華写真集のかたちにまとめあげられ、発表されるや多くの人々を感嘆させました。また、曼荼羅の豊穣な世界から立ちのぼる「エロス」や「不二」という真言密教の宇宙観は、その後の石元の写真や人生観にも多大な影響を及ぼしました。
本展では、石元最晩年にあたる2011年に、ポジフィルムからデジタル技術で復元された色彩によるカラープリントを紹介します。
担当学芸員によるギャラリートーク|3月7日(土)、21日(土)、4月4日(土)、25日(土)午後2時 *中止になりました。
*会期が下記の通り延長となりました。
変更前:~4月29日(水・祝)
変更後:~5月25日(月)
(4月2日、3日、5月18日、19日は休室)